テン乗りは割引か|乗り替わりと継続騎乗の成績を実測

テン乗りは割引か|乗り替わりと継続騎乗の成績を実測

「テン乗りだから割引」。予想を組むときによく出てくる言葉です。その騎手がその馬に乗るのは今回が初めてなのだから、手の内を知っている継続騎乗より不利だろう、という理屈です。
実際に数えると、継続騎乗の複勝率は25.6%、乗り替わりは19.6%。たしかに大きな差がついています。ところが乗り替わりの馬は、そもそも人気が薄い馬に偏っていました。
この記事では、乗り替わりを人気の差を取り除いたうえで測り直します。あわせて、外国人騎手への乗り替わりと、上位騎手への乗り替わりについても実測しました。

※過去のレース結果等のデータを独自の条件で集計・分析し、記事として編集しています。
出典:TARGET frontier JV

対象
JRA10場・平地(芝・ダート)
期間
2016年〜2026年8月9日/前走のある442,176走
乗り替わり
前走と違う騎手が乗ること(63.5%)
テン乗り
その騎手がその馬に初めて乗ること

この記事の「乗り替わり」と「テン乗り」の決め方

継続騎乗は前走と同じ騎手が乗ること、乗り替わりは前走と違う騎手が乗ることです。前走のある442,176走のうち、乗り替わり(テン乗りも含む)は63.5%を占めます。半分以上が前走と違う騎手が乗る、というのが普段のレースの姿です。

テン乗りは、その騎手がその馬に初めて乗ることを指します。例えば、前走は別の騎手でも、2走前に乗っていればテン乗りではなく乗り替わりです。
初騎乗かどうかは、その馬のデビュー戦までさかのぼって数えています。

※前走は直前のJRA出走を指します。地方競馬に遠征して戻ってきた場合は、その前のJRA出走を前走として扱っています。
※取消・除外となった馬は除いています。
※デビュー戦は前走がないため、この記事の集計には入りません。
※出走数10以下のマスは表に載せていません。数字が無いのではなく、信用できる数になっていない、という意味です。

継続騎乗と乗り替わりで成績はどれだけ違うか

まず全体の数字

騎手出走数勝率複勝率単勝回収率複勝回収率平均人気
継続騎乗161,4488.7%25.6%72.5%72.9%6.9
乗り替わり75,7716.6%21.2%72.0%75.5%7.8
テン乗り204,9576.3%18.9%72.5%72.8%8.4

テン乗りの複勝率は18.9%で、3つのうちいちばん低い数字です。継続騎乗は25.6%ではっきりと好走しており、ここだけ見れば、定説どおりです。
ただし、継続騎乗の平均人気は6.9番人気、テン乗りは8.4番人気です。比べている馬の人気自体が違うため、単純な複勝率だけでは評価できません。

クラスごとに見ても向きは同じ

クラスを分けても、並び方は変わりません。数字は複勝率です。

クラス継続騎乗乗り替わりテン乗り
未勝利(計171,872走)25.5%21.4%17.8%
1勝クラス(計138,398走)25.7%21.9%19.9%
2勝クラス(計64,205走)26.2%21.0%20.6%
3勝クラス(計29,543走)25.2%20.5%19.8%
オープン特別・リステッド(計17,997走)27.6%21.2%19.6%
重賞(計20,161走)23.4%18.9%17.1%

どのクラスでも継続騎乗がいちばん上に来ます。ここまでは「乗り替わりは割引」で説明がつくように見えます。

テン乗りは割引か

同じ人気帯の馬どうしで並べる

人気は、その馬がどれだけ走ると見られているかの目安です。そこで人気帯をそろえ、同じ人気帯の馬どうしで比べます。数字は複勝率です。

人気継続騎乗乗り替わりテン乗り
1番人気65.2%62.5%64.5%
2〜3番人気47.3%46.1%46.4%
4〜6番人気27.8%28.0%26.5%
7〜9番人気13.6%13.9%13.0%
10番人気以下4.7%5.0%4.3%

差はほとんど消えました。1番人気では継続騎乗65.2%に対し、テン乗りは64.5%。乗り替わりの62.5%を上回っています。

4〜6番人気では継続騎乗27.8%、テン乗り26.5%。7〜9番人気は13.6%と13.0%です。テン乗りがわずかに下ですが、その幅は1%前後にとどまります。

勝率でも同じことが起きています。

人気継続騎乗乗り替わりテン乗り
1番人気33.1%30.4%33.7%
2〜3番人気15.9%15.3%17.3%
4〜6番人気7.3%7.5%7.2%
7〜9番人気3.0%2.9%2.9%
10番人気以下0.9%1.0%0.8%

1番人気の勝率はテン乗りが33.7%で、継続騎乗の33.1%を上回りました。2〜3番人気でも17.3%と15.9%で、テン乗りのほうが上です。

回収率で見るとどうなるか

好走率で差がないなら、馬券としてはどうなのか。単勝を100円ずつ買い続けた場合の回収率です。

人気継続騎乗乗り替わりテン乗り
1番人気77.5%75.8%81.8%
2〜3番人気76.4%75.9%84.7%
4〜6番人気79.1%79.6%77.6%
7〜9番人気73.9%72.1%75.7%
10番人気以下61.7%65.1%63.7%

1番人気のテン乗りは81.8%、継続騎乗は77.5%。2〜3番人気ではテン乗りが84.7%まで伸び、この表でいちばん高い数字になりました。同じ人気帯で並べると、テン乗りの単勝回収率のほうが上でした。「テン乗りを理由に評価を下げる必要はない」ということになります。

外国人騎手への乗り替わりは買いか

短期免許・通年免許・日本人騎手

「外国人騎手に乗り替わったら買い」もよく聞く話です。ここでは乗り替わりだけを取り出して、乗り替わった先の騎手で3つに分けました。

  • 外国人騎手(通年免許):C.ルメール・M.デムーロの2人。JRAの通年免許を持ち、1年を通して乗っています(7,353走)。
  • 外国人騎手(短期免許):それ以外の外国人騎手78人。短期免許で来日し、決まった期間だけ乗ります(8,899走)。
  • 日本人騎手:上記以外です。
乗り替わった先出走数勝率複勝率単勝回収率複勝回収率平均人気
日本人騎手へ264,4765.8%18.4%71.9%73.1%8.5
外国人騎手へ
(短期免許)
8,89912.6%32.4%79.2%79.0%5.4
外国人騎手へ
(通年免許)
7,35319.8%45.8%79.4%82.4%3.3

複勝率は通年免許が45.8%、短期免許が32.4%、日本人騎手が18.4%。見た目の差は大きく開いています。
ただし平均人気も3.3番人気、5.4番人気、8.5番人気と大きく違います。外国人騎手が乗る馬は、人気の面ですでに上位に寄っています。

同じ人気帯の馬どうしで並べる

ここでも人気帯をそろえます。数字は複勝率です。

人気日本人騎手へ外国人騎手へ(短期免許)外国人騎手へ(通年免許)
1番人気63.0%67.2%66.8%
2〜3番人気45.9%47.8%49.3%
4〜6番人気26.8%26.7%29.9%
7〜9番人気13.2%13.9%15.0%
10番人気以下4.5%6.4%7.4%

1番人気では短期免許67.2%、日本人騎手63.0%。10番人気以下でも6.4%と4.5%で、外国人騎手が上です。人気をそろえても短期免許の方が上です。

単勝の回収率も見ておきます。

人気日本人騎手へ外国人騎手へ(短期免許)外国人騎手へ(通年免許)
1番人気79.9%83.8%79.0%
2〜3番人気82.3%78.4%82.6%
4〜6番人気77.9%83.9%79.2%
7〜9番人気74.6%80.5%72.8%
10番人気以下64.0%66.6%69.8%

1番人気の短期免許が83.8%、4〜6番人気の短期免許が83.9%。日本人騎手より回収率が高い人気帯が多くなりました。「外国人騎手に乗り替わったら買い」は、好走率からみてもおおむね正しい、ということになります。

クラス別に見る

クラスごとにも並べておきます。数字は複勝率です。

クラス日本人騎手へ外国人騎手へ(短期免許)外国人騎手へ(通年免許)
未勝利(計103,996走)17.1%35.5%51.1%
1勝クラス(計90,044走)19.5%33.5%47.7%
2勝クラス(計42,644走)19.4%31.7%44.4%
3勝クラス(計20,712走)18.9%28.5%39.3%
オープン特別・リステッド(計12,325走)19.2%28.3%37.6%
重賞(計11,007走)15.9%27.1%36.5%

開きがいちばん大きいのは未勝利で、通年免許51.1%に対し日本人騎手17.1%。重賞でも通年免許は36.5%あり、日本人騎手の15.9%を上回りました。

ただしこの表は人気をそろえていません。ひとつ前の表で見たとおり、外国人騎手には人気馬が集まるため、この開きのかなりの部分は、その差によるものです。

騎手ごとの成績

短期免許で来日した騎手を、乗り替わりのときだけ取り出して並べます。100走以上の27人です。

騎手出走数勝率複勝率単勝回収率複勝回収率平均人気
D.レーン69522.4%49.6%81.0%84.1%2.8
A.シュタルケ6809.0%27.2%93.5%86.6%6.3
C.デムーロ61819.4%43.7%95.8%82.9%3.8
J.モレイラ56429.8%58.5%88.6%86.1%2.2
T.マーカンド39610.9%34.3%66.7%82.5%4.7
F.ミナリク3685.4%14.9%59.8%66.8%7.4
キング32813.7%33.5%73.4%83.8%4.8
R.ムーア32716.8%44.6%69.1%84.3%3.1
B.ムルザバエフ32511.7%31.7%96.3%85.7%4.9
S.フォーリー2965.1%22.6%39.6%74.6%7.4
D.バルジュー2947.1%24.1%67.2%61.8%6.3
O.マーフィー26916.4%45.4%83.3%86.8%3.3
H.ドイル2555.5%18.0%72.2%61.7%7.3
ディー2375.5%20.3%40.8%66.5%6.4
ルメート1847.1%22.8%82.0%57.3%6.9
V.シュミノー17810.7%26.4%80.1%77.4%6.0
F.ヴェロン1747.5%25.9%58.1%87.9%7.0
B.アヴドゥラ14311.9%34.3%90.7%99.2%5.3
W.ビュイック14320.3%42.0%94.2%78.9%3.7
L.ヒューイットソン12910.9%31.0%99.9%69.8%4.9
ゴンサル1238.9%26.0%52.4%80.8%6.3
H.ボウマン11312.4%37.2%75.8%81.4%4.7
オシェア1093.7%12.8%9.2%27.7%7.4
T.ベリー10513.3%35.2%189.6%87.9%6.0
D.ホワイト1029.8%29.4%138.8%86.7%6.5
D.イーガン10115.8%36.6%118.6%86.7%4.9
K.ティータン1018.9%17.8%61.4%49.6%6.4

同じ「外国人騎手」でも中身はかなり違います。いちばん高いJ.モレイラは複勝率58.5%、いちばん低いオシェアは12.8%です。当たり前ですが、外国人騎手という枠でひとくくりにせず、誰が乗るのかが重要です。

※騎手名はJRAの登録名です。データに登録名が入っていない一部の騎手は、出馬表で使われる短い表記のまま載せています。
※騎乗数が100走に満たない51人(合わせて1,542走)は表から外しています。短期免許の外国人騎手への乗り替わりは、合わせて8,899走です。

上位騎手への乗り替わりは効くのか

もうひとつ、乗り替わりには方向があります。上位の騎手に替わったのか、下位の騎手に替わったのかです。

※前年に1勝もしていない騎手は順位が付きません。そのため乗り替わり280,728走のうち56,245走をこの節から外しています。

乗り替わりの方向出走数勝率複勝率単勝回収率複勝回収率平均人気
前年順位が上の騎手へ104,3357.6%22.3%74.1%74.7%7.6
前年順位が下の騎手へ117,1345.9%18.5%73.1%73.6%8.4
前年順位が同じ騎手へ3,0144.0%14.2%50.0%62.4%9.3

上位の騎手へ替わった場合の複勝率は22.3%、下位の騎手へ替わった場合は18.5%。ここでも平均人気が7.6番人気と8.4番人気で違います。

次に、人気帯をそろえます。数字は複勝率です。

人気前年順位が上の騎手へ前年順位が下の騎手へ
1番人気64.0%64.0%
2〜3番人気47.2%45.6%
4〜6番人気27.5%26.5%
7〜9番人気13.5%13.4%
10番人気以下4.7%4.6%

2〜3番人気は47.2%と45.6%、4〜6番人気は27.5%と26.5%。上位騎手へ替わったほうがわずかに上ですが、開きはどの人気帯も2%に届きません。1番人気にかぎっては64.0%どうしで並びます。
「格上の騎手に替わったから買い」という格言は、数字の裏付けを得られませんでした。

回収率が100%を超えたセルを確かめる

ここまでの表で、単勝回収率が100%を超えたマスは3つでした。順に確かめます。まず期間を前半と後半に割って、どちらでも100%を超えるか。次に、最高配当1件を除外しても残るか。最後に、同じ出走データから重複を許して引き直す計算を2万回くり返して、回収率がどのあたりに収まりうるかの幅を出します。この幅が100%をまたぐなら、100%超と言い切ることはできません。

100%を超えたセル出走数回収率前半の期間後半の期間最高配当1件を除外高配当上位5件を除外ぶれ幅
D.イーガン
(短期免許の騎手/単勝)
101118.6%118.6%
(2021〜2026年)
99.3%39.9%52.3〜198.2%
D.ホワイト
(短期免許の騎手/単勝)
102138.8%138.8%
(2016〜2020年)
105.1%34.3%50.5〜248.0%
T.ベリー
(短期免許の騎手/単勝)
105189.6%189.6%
(2016〜2020年)
145.9%43.7%69.6〜338.5%

どの項目も、最高配当1件を除外だけであればある程度残りますが、高配当上位5件を除外すると100%以下になりました。また、該当騎手は近年日本での騎乗がないため、使えるデータにはなりません。

※「ぶれ幅」は、同じ出走データから重複を許して引き直す計算を2万回くり返し、出てきた回収率の真ん中95%が収まった範囲です。ブートストラップによる95%区間です。
※後半の期間は2026年8月9日までです。
※期間が片方しか埋まらないのは、その騎手が来日した時期が前半か後半の一方に寄っているためです。

まとめ

  • テン乗りは割引ではありません:1番人気の複勝率は継続騎乗65.2%に対しテン乗り64.5%です。
  • 回収率ではテン乗りが上:2〜3番人気のテン乗りは単勝84.7%で、継続騎乗の76.4%を上回ります。テン乗りを理由に評価を下げる必要はありません。
  • 外国人騎手への乗り替わりは好走率が高い:1番人気では短期免許67.2%、日本人騎手63.0%です。
  • 騎手ごとの差は大きい:短期免許の騎手の中でも複勝率は12.8%から58.5%まで開きます。外国人騎手というくくりではなく、誰が乗るのかで見てください。
  • 上位騎手への乗り替わりも買いではありません:成績上位の騎手への乗り替わりは複勝率にほとんど影響しません。

テン乗りだからといって評価を下げる必要がありません。また、成績が良い騎手への乗り替わりも複勝率にほとんど影響しないため、あえて評価を上げる必要はありません。

本記事の数字はJRA10場・平地(芝・ダート)の実測値です(2016年〜2026年8月9日、442,176走)。前走のある出走のみを数えています。AI予想とは独立した過去傾向の分析で、的中を保証するものではありません。